この記事は、「今から理学療法士になろうか悩んでる方」に向けて、現在の状況を見た私の考えをお伝えしていく記事です。
既に理学療法士の学校に入ってる方や、資格を取って働いている方にとってはショックな話となるかもしれません。
<悩める人>30代から理学療法士を目指すのは、やっぱり遅いんでしょうか…?



遅くはないですよ。私も29歳でなりました。ただ、今から目指すのはすすめません。
この記事は、29歳で理学療法士になり、14年働いて管理職まで務めた立場から書いています。
結論から言うと、止める理由は年齢ではありません。時期的な話です。
「30代は遅い」と書いてある記事は山ほどあります。
でも、実際に30代手前で資格を取った本人が書いたものは、あまり見当たりません。
私が払った学費と、もらった初任給の実額から書いていきます。
ぜおん
理学療法士14年。不動産会社を経て理学療法士になり、総合病院・老健・介護系会社の4ヶ所で勤務。デイサービスの管理者、老健の主任、教育委員長、介護認定審査員を経験。求人を出す側、面接をする側、辞めていく職員と面談する側にいました。面談のためにメンタルヘルス・マネジメント検定2級と心理カウンセラーも取得しています。
自身の転職は4回、8ヶ所の転職エージェントに登録。リハビリ職・介護職の友人から10人ほどの転職相談を受けています。詳しい経歴はコチラ。
結論:いま30代から理学療法士を目指すのはオススメできない!


私は29歳で理学療法士になりました。だから「30代は遅い」とは思っていません。
なれるかどうかで言えば、なれます。すすめるかどうかで言えば、すすめません。
実際に働いてみて、年齢がハンデになった場面はほとんどなかったからです。
【当時の話】私が資格を取ったのは17〜18年前です。希望者が集まる一部の回復期病院を除けば、就職先は選べる状況でした。
ところが、今から目指すとなると話が変わります。
この17年で、資格そのものが置かれている状況が変わってしまったからです。
厚生労働省が出している推計を先に置いておきます。
PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる結果となった。
出典は医療従事者の需給に関する検討会・第3回理学療法士・作業療法士需給分科会の資料です。
「これから足りなくなる」ではありません。
すでに余っている、と国が書いているんです。
29歳で理学療法士になった私が実際に払ったもの
まず、きれいごと抜きの金額から出します。
ここを知らずに決めてしまうのが、いちばん危ないと思っているからです。
夜間の専門学校に4年通って学費は500万円でした
私が通ったのは夜間の専門学校で、4年制でした。
学費は総額でおよそ500万円です。
これを一括で払えるはずもないので、昼は派遣で働いて、夜に学校へ通い、奨学金も借りました。
その前は不動産会社に1年半いました。そこを辞めて、20代の後半を丸ごと学校に使ったことになります。
4年間、昼に働いて夜に授業を受ける生活でした。
実習の時期は、その派遣の仕事も止めることになります。
払ったのは学費だけではなく、その4年間で稼げたはずのお金も含まれる、ということです。
奨学金の返済は働き始めてからも続きます
学費500万円を貯金だけで用意できる人は、そう多くないと思います。
私も奨学金を借りました。
借りた分は、当然ながら働き始めてから返していくことになります。
- 初任給の手取りから、毎月の返済が引かれていく
- 借りた額によっては、返済が10年以上続くこともある
つまり資格を取ったあとも、しばらくは手取りがさらに減った状態で働くことになります。
貸与の条件や返済の年数は借り方で変わるので、日本学生支援機構で確認してください。
ここを計算に入れずに決めてしまうと、働き始めてから効いてきます。
初任給は手取り17万円でした
そこまでして資格を取って、最初にもらった給料が手取り17万円です。
年収でいうと400万に届きませんでした。
29歳で、同年代の友人と比べるとかなり安かったのを覚えています。
| 払ったもの | 金額・期間 |
|---|---|
| 学費(夜間4年制の専門学校) | 約500万円 |
| 通った期間 | 4年間(昼は派遣で就労) |
| 資格を取った年齢 | 29歳 |
| 初任給 | 手取り17万円/年収400万弱 |
もちろんこれは17〜18年前の金額です。
ただ、今の相場と比べても、そこまで大きくは変わっていません。
14年働いて最終的な年収は500万円でした
そこから14年働いて、最終的な年収は500万円ほどでした。
途中で3回転職していて、転職のたびに年収は上げてきたほうだと思います。
主任も務め、施設の教育委員長もやったうえでの金額です。
- 令和6年の賃金構造基本統計調査では、理学療法士などの平均年収は約444万円
- 14年働いて役職に就いて500万。平均を56万円上回るのがやっと
この数字は賃金構造基本統計調査によるもので、理学療法士のほか作業療法士なども含む区分です。
経験の浅い人からベテランまで、全部ならしての平均だということです。
14年やって役職に就いた人間が、全国平均をようやく少し超える。それがこの仕事の伸び方です。


それでも、500万円という数字の位置はつかめると思います。
学費500万と4年を投じて、たどり着く先がここだ、ということです。
30歳という年齢はハンデにはならない



30代の新卒だと、そもそも採ってもらえないんじゃないですか?



そこは心配いりません。採用する側にもいましたが、年齢はほぼ見ていませんでした。
ここははっきり否定しておきたいところです。
29歳の就職活動で年齢を理由に落とされた記憶はありません
私自身、就職活動で不利だと感じた場面はありませんでした。
むしろ逆のことがありました。
不動産会社で働いていた経験が、プラスに働く場面もあったんです。
電話の受け答え、書類の扱い、目上の人との話し方。学校を出たばかりの22歳には、まだ身についていないことです。
社会人を経験してから来た人は、そこがすでにできています。
現場では、これが思っている以上に効きます。
- ご家族への説明で、言葉を選べる
- 看護師や相談員との調整で、角を立てずに話を通せる
- 報告や記録を、後で読む人のことを考えて書ける
利用者さんやご家族と話すのも、他の職種と調整するのも、結局は社会人としてのやり取りだからです。
技術は入ってから覚えられますが、こちらは短期間では身につきません。
採用する側になってわかったのは年齢より謙虚さでした
その後、私は求人を出す側、面接をする側にもなりました。
その立場から言うと、30代の新卒セラピストでもまったく問題ありません。
年齢は、正直なところ見ていませんでした。
- 年齢が上でも、謙虚な姿勢が見えれば一緒に働きたいと思う
- 若くても、生意気そうだと感じたら落とすことはある
- 結局のところ、その人と毎日働けるかどうかで決まる


年齢そのものより、こちらのほうがずっと大きい基準でした。
「30代だから採らない」という施設は、私の知る範囲ではほとんどないと思います。
ただし年上の新人には別の壁がありました
採用されるかどうかとは別に、入ってからの話があります。
年下が上司になります。
これはお互いにやりづらいものです。
教える側は、年下であることに気を遣う。教わる側は、年上であることに気を遣う。どちらも遠慮してしまうのが、いちばんやりにくい形です。
指導する側も、年上の新人にどこまで言っていいのか測りかねます。
- 私は最初の職場でパワハラを受けました
- 年上の新人だったことが、関係していたかもしれません
ただ、これを一方的に相手のせいにするつもりはありません。
周りより年上だった私が、生意気に見えていた可能性もあると思っています。
偉そうに映っていたのかもしれない、と今なら思えます。
年齢は採用では効きません。でも入ってからの空気には効きます。ここを分けて考えておいてください。
職場のいじめや人間関係については、コチラの記事で対処法をまとめています。


それでもすすめないのはこの17年で状況が変わったから!
ここからが本題です。
私が止めるのは、あなたの年齢が理由ではありません。
資格の価値そのものが下がってきているからです。
私のときはどこでも就職できました
17〜18年前は、就職先を選べる時代でした。
希望者が集まる一部の回復期病院を除けば、行きたいところに行けたんです。
今は、普通の病院に就職するだけでも倍率があります。
【現場での変化】リハビリ職が余ってきた結果、PTが介護の業務を担うことも、今では普通に起きています。
20年、30年前の理学療法士は、看護師よりも給料がよかったと聞きます。
立場としても、もっと専門職らしい扱いを受けていたそうです。
その面影は、正直なところ、もうありません。
毎年1万1千人が新しく資格を取っています
数字で見ると、はっきりします。
第61回の国家試験の結果がこちらです。
| 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
|---|---|---|---|
| 理学療法士 | 12,951人 | 11,156人 | 89.7% |
| 作業療法士 | 5,632人 | 4,947人 | 91.2% |
理学療法士と作業療法士を合わせると、1年で1万6千人が新しく資格を持ちます。
これが毎年続いているわけです。
- 資格を持つ人は、毎年増え続けるだけで減りません
- 定年で抜ける人より、新しく入る人のほうがずっと多い状態です
しかも新卒の合格率は94.9%で、学校を出れば大半が資格を手にします。
試験の実施状況は厚生労働省のページで毎年公表されています。
難関資格であれば、数が絞られて価値も保たれます。合格率が9割ということは、入り口で絞られていないということです。
そのうえで、国の推計は2040年頃に供給が需要の約1.5倍になると書いています。


今から学校に入ると、資格を手にするのは4年後です。
そこから定年まで働くとしたら、ちょうど供給が膨らんでいく時期と重なります。
飽和の問題については、コチラの記事でも詳しく扱っています。


物価が上がっているのに単価は下がっています
いちばん実感したのは、訪問リハビリの単価です。
私が見てきた範囲では、10年ほど前は1件4,000円から4,500円ありました。
今は3,000円あたりが普通になってきています。
- 一般企業では、賃上げで給料が上がってきている
- 物価も上がり続けている
- それなのに、リハビリ職の単価は下がっている
これは私が現場で見てきた肌感覚なので、統計ではありません。
ただ、逆転が起きているという方向は間違っていないと思います。
4年後あなたは何歳になっていますか
ここまでの話を、あなたの年齢に当てはめてみてください。
今から学校に入っても、資格を手にするのは4年後です。
そこから新人として現場に立ちます。
| 今の年齢 | 資格を取る年齢 | ひととおり任される頃 |
|---|---|---|
| 30歳 | 34歳 | 39歳前後 |
| 33歳 | 37歳 | 42歳前後 |
| 36歳 | 40歳 | 45歳前後 |
新人として教わる立場になるのが、30代の後半や40代ということです。
そこは覚悟しておけば乗り越えられます。
私もそうでしたから、そこは止める理由になりません。
【私の場合】33歳で1年目でした。年下の先輩に教わりながら、記録の書き方から覚え直しています。
問題は、その時期がどんな市場になっているかのほうです。
あなたが役職や年収を伸ばしたい40代は、国の推計では供給がさらに膨らんでいく時期と重なります。
私が29歳で入ったときは、逆でした。
人が足りず、資格を持っているだけで選ぶ側に立てた時代だったんです。
同じ29歳でも、入る時期でここまで変わります。
- 4年後、あなたは何歳になっているか
- その年齢から、新人として何年やれるか
- 学費と、働けなかった4年分を取り戻せそうか
この3つに答えが出せるなら、判断材料としては足りていると思います。
今後5〜10年後には介護のほうが給料が上がる可能性も?
これは私の見立てですが、書いておきたいことがあります。
リハビリ職は余ってきています。
一方で、介護は人手が足りていません。
| 資格を取るまで | 学費の目安 | 人の数 | |
|---|---|---|---|
| 理学療法士・作業療法士 | 3〜4年の養成校 | 数百万円 | 供給が需要を上回っている |
| 介護職員初任者研修など | 数ヶ月 | 数万円〜 | 人手が足りていない |
足りない側の給料が上がり、余っている側が上がらない。
これは、市場としてはごく自然な動きです。
そうなると、4年かけて取った資格と、数ヶ月で取れる資格の給料が並ぶ可能性が出てきます。
実際、リハビリをやりたくて資格を取ったのに、介護の業務に多く入っている人を何人も見てきました。
もちろん、そうならない可能性もあります。
ただ、4年と500万を投じる前に、この比較は一度してほしいと思っています。
それでも30代でPTを目指すならこういう人です
ここまで止める話ばかり書いてきました。
でも、全員に向かって無理だと言うつもりはありません。



じゃあ、どういう人なら目指していいんですか?



この仕事がよっぽど好きな人です。逆に、なんとなくで入った人はまず続きません。
給料も労働環境も、好きという気持ちで埋めるしかない場面が出てきます。
- 身近な人のリハビリを見て、この仕事がしたいと強く思った
- 給料が上がらなくても続けられる、と言い切れる
- 4年と数百万を、戻ってこなくても納得できる
この3つに素直にうなずけるなら、年齢は気にしなくていいと思います。
私自身、この仕事は好きでしたし、やりがいもありました。
好きで入った人は、給料の話が出ても踏みとどまります。なんとなく入った人から順に、数年で現場からいなくなっていきました。
ただ、なんとなく安定してそうだからという理由なら、やめておいたほうがいいです。
医療職は安定している、という言葉をよく聞きます。
たしかに仕事が急になくなることはありませんが、安定しているのは雇用であって、給料ではありません。
【よくある誤解】資格さえ取れば食べていける、という話。実際には、資格を持った人が毎年1万人以上増え続けています。
私が17年前に感じていた安定と、今の安定は、中身が違ってきています。
すでに働いている人がこの先を考えるなら
ここまでは、これから目指す人に向けて書いてきました。
すでに理学療法士や作業療法士として働いていて、この先が不安になった人もいると思います。
その場合、資格を取り直すより職場を変えるほうが早いです。
- 私は3回転職して、そのたびに年収を上げました
- 同じ資格でも、職場によって給料の伸び方はまるで違います
- 求人票では、その伸び方までは読み取れません
昇給の仕方や役職の付き方は、中を知っている人に聞くのが早いです。
- 今の職場で、5年後にいくらもらえるかが見えているか
- 役職に就いた人が、実際にどのくらい上がったか
- 今すぐ辞める話ではなく、求人を見ておくだけでもいい
リハビリ職専門のPTOT人材バンクのような相談先なら、年収の上がり方まで聞いたうえで比べられます。
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相談先の選び方は、コチラの記事で5社を比べています。


よくある質問
検索でよく見かける疑問にも、当時なった立場から答えておきます。
30代から理学療法士になれますか?
なれます。私は29歳で資格を取りました。
ただ、なれることと、いま目指すかどうかは別の話です。
作業療法士なら30代からでも大丈夫ですか?
事情はほとんど同じです。
厚生労働省の需給推計は理学療法士と作業療法士をまとめて扱っていて、どちらも供給が需要を上回っているという結果でした。
夜間の学校なら働きながら通えますか?
通えます。私も昼は派遣で働きながら、夜に4年通いました。
ただし実習の時期は仕事を止めることになるので、その間の収入が減ることも計算に入れてください。
30代で資格を取ったら就職はできますか?
就職自体はできると思います。年齢で落とす施設は、私の知る範囲ではほとんどありません。
ただ、私のころと違って、今は希望者が集まる職場に倍率がついています。
社会人経験は現場で役に立ちますか?
役に立ちます。私の場合は不動産会社での経験が効きました。
電話対応や書類の扱い、目上の人との話し方は、採用する側から見ても評価していた部分です。
まとめ:止める理由はあなたの年齢ではありません
もう一度書きますが、30代だから遅い、という話ではありません。
私自身が29歳でこの道に入って、14年やってきました。
この記事を読んで気持ちが揺らいだなら、それはたぶんまだ決めきれていないということだと思います。
4年と数百万を使う決断で、揺らいだまま進むのは危ないです。
逆に、ここまで読んでも気持ちが変わらなかったなら、それが答えかもしれません。
私は止める側に回りましたが、この仕事そのものを否定しているわけではありません。14年やって、好きな仕事でした。
17年前の私に同じ質問をされたら、たぶん背中を押していたと思います。
でも今は、正直に止めます。
4年と数百万を使ったあとに待っている景色が、あのころとは変わってしまったからです。
それでもやりたい、と思えたなら止めません。
その気持ちがある人だけが、この仕事を続けられると思っています。
すでに資格を持っていて、この先が不安になった方は、コチラの記事もあわせて読んでみてください。











