「理学療法士 人手不足」と検索すると、足りないという記事が出てくる。
「理学療法士 飽和」と検索すると、余っていると書いてある。
<悩める人>結局どっちなんですか?現場は毎日バタバタで人が足りないのに、将来はいらなくなるって言われても…。



どちらも本当です。矛盾していません。国の資料を一緒に見ていくと、はっきり分かります。
目の前の職場は人が足りない。でも資格を持つ人の数は、すでに国が必要と見込む量を超えている。
この記事では、厚生労働省が公表している需給推計の図をそのまま載せて、何が起きているのかを確認します。
そのうえで、私自身が現場で見てきた10年の変化も書きます。
先に断っておくと、数字は国の資料、実感は私の見てきた範囲の話として、分けて書いていきます。
ぜおん
理学療法士14年。不動産会社を経て理学療法士になり、総合病院・老健・介護系会社の4ヶ所で勤務。デイサービスの管理者、老健の主任、教育委員長、介護認定審査員を経験。求人を出す側、面接をする側、辞めていく職員と面談する側にいました。面談のためにメンタルヘルス・マネジメント検定2級と心理カウンセラーも取得しています。
自身の転職は4回、8ヶ所の転職エージェントに登録。リハビリ職・介護職の友人から10人ほどの転職相談を受けています。詳しい経歴はコチラ。
結論|理学療法士は人手不足でも供給はもう需要を超えています
まず、国が出している図を見てください。
厚生労働省が2019年に公表した、理学療法士と作業療法士の需給推計です。


赤い太線が供給推計、つまり資格を持って働く人の数です。
オレンジ・グレー・青の3本は需要推計で、必要とされる人数を3つの想定で計算したものです。
資料には、こう書かれています。
PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる結果となった。
厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(第3回理学療法士・作業療法士需給分科会 資料1)
「2040年には」ではありません。
この資料が作られた時点で、すでに上回っていると書いてあります。
2026年ごろにはどの想定でも追い越されます
図をもう一度見てください。
赤い供給推計が、いちばん需要が多い想定であるオレンジの線(需要ケース1)を追い越すのが2026年ごろです。
グレーと青(ケース2・3)は、すでに2018年の時点で赤に抜かれています。
つまり2026年を過ぎると、どの想定で計算しても供給が需要を上回るということです。



もう起きてるって…これから資格を取る人はどうすればいいんですか。



厳しい数字ですよね。ただ、これは「いま働いている人の仕事がなくなる」という話ではありません。順番に見ていきましょう。
「飽和する」は予想ではありません。国の推計では、もう起きています。
増えた理由は1999年に養成校が作りやすくなったから
「養成校が増えすぎたから」と言われますが、いつ、なぜ増えたのかまで書かれていることは多くありません。
ここも国の資料に載っています。


入学定員の推移です。長いあいだ横ばいだった線が、平成11年(1999年)から一気に立ち上がっています。
- 平成11年(1999年)3,625人
- 平成19年(2007年)11,646人
- 平成27年(2015年)13,435人
16年で3.7倍です。
図の中にも「平成11年 養成施設カリキュラム改訂 規制緩和政策により学校養成施設増加」と書き込まれています。
規制緩和の中身も公表されています
同じ資料に、こう書かれています。
規制緩和推進3か年計画(平成10年3月閣議決定)
厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計を踏まえた今後の方向性について」(第3回需給分科会 資料2)
(中略)
平成11年3月31日付けで理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則を改正し、同年4月から施行。
※ 学校養成施設における教育内容が、科目ごとの時間数の規定から、分野ごとの単位数の規定に移行。その他、教員要件の緩和等が行われた。
つまり国が学校を作りやすくしたということです。
個々の学校が勝手に増えたのではなく、政策としてそうなりました。



だから「増えすぎたのは自己責任」みたいな話ではありません。私たちが選んだ結果ではないところで、学校の数が増える仕組みができていました。
なお、同じ資料2のp13「理学療法士・作業療法士の養成の質に関する主なご意見」には、養成の質の低下を指摘する意見も並んでいます。
「最近の新卒者を見ていると、質が非常に厳しいと感じられる」という発言がそのまま載っています。
2040年の日本は資料の5か国でいちばん多くなります
もう1枚、国の資料を見てください。
人口10万人あたり何人の療法士がいるかを、諸外国と比べたものです。


左の表が2018年時点の国際比較です。
ここに載っているのは日本・アメリカ・ドイツ・イギリス・フランスの5か国だけで、日本は50〜100人。
5か国の中でいちばん多いドイツが150〜200人でした。
右の表が日本の将来です。
人口10万人あたりの理学療法士の就業者数が、こうなります。
- 2025年 163人 / 2030年 199人
- 2035年 238人 / 2040年 278人
2040年の278人は、この5か国でいちばん多かったドイツ(150〜200人)を上回ります。資料にも「2040年には人口10万人に対する療法士数は約3倍に増加」と書かれています。この約3倍は2018年と比べた数字で、PTとOTを合わせた療法士数の話です。
他の国が今後どうなるかは、この資料には載っていません。それでも、日本のPTの密度がこれから2倍近くになる見通しであることは、国の資料が示しています。



数字を見せられても、正直どうしたらいいのか分からなくなってきました。



そう思って当然です。ここまでは全国の話なので、いまの職場の実感とは噛み合わないはずです。次はそのズレを説明します。
それでも現場が「人が足りない」と言う理由
ここまで読んで、こう思ったはずです。



でもうちの職場、本当に人が足りてないんですけど。
それも本当です。
そして、さっきの図と矛盾しません。
国が見ているのは全国の総量です。あなたが感じているのは、目の前の職場が回っているかどうか。この2つは別の話です。
全国で人数が余っていても、その人たちがあなたの職場に来るとは限りません。給料が合わない、通えない、夜勤がある、雰囲気が合わない。応募が来ない理由はいくらでもあります。
つまり現場が足りないのは「有資格者」ではなく「条件の合う人」です。
人数の問題ではなく、条件の問題になっている。
ここが「人手不足」と「飽和」が同時に成り立つ理由です。



そして条件で選ばれる時代になると、条件を出せない職場から順に埋まらなくなります。いま忙しい職場ほど、この先きつくなるかもしれません。
だからこそ、いま自分の職場が出している条件が、他と比べてどのあたりなのかだけは知っておいたほうがいいです。
動くかどうかは、そのあとで決められます。
\ 自分の条件はいまどのあたり? /
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登録後に担当の方から電話が来ます。
詳しくは記事の後半に書きました。
なぜ「オワコン」と言われるのかを13の理由で整理した記事もあります。
数字の背景を知りたい方はコチラの記事にまとめています。


私がこの10年で見てきた変化
ここからは国の資料ではなく、私が現場で見てきた範囲の話です。
統計ではないので、そのつもりで読んでください。
訪問リハの単価が下がりました
10年ほど前、訪問リハビリの単価は1件4,000〜4,500円ありました。
いまは3,000円あたりが普通になってきています。
あくまで私が見てきた範囲の数字です。ただ、物価は上がり、一般企業では賃上げも進んでいるのに、リハビリの単価だけが下がっている。この逆転が、いちばん実感していることです。
就職の難易度が変わりました
私が資格を取ったころは、一部の希望者が集まる回復期の病院を除けば、どこでも就職できました。
いまは、普通の病院に就職するだけでも倍率があります。10年ちょっとでここまで変わりました。
PTが介護の業務を担うようになりました
20〜30年前の理学療法士は、看護師より給料がよかったと聞きます。
専門職としての扱いも、いまとは違ったようです。
いまは人が余ってきて、PTが介護の業務を担うことも普通に起きています。
いまこの時代に理学療法士を目指すのは、よっぽど好きでなければすすめません。なんとなく安定していそうだから、では続かないと思います。
私はいま、理学療法士としては働いていません。辞めた理由は職場の人間関係が直接のきっかけでしたが、こうした数字を知っていたことも、戻らない判断を後押ししました。資格が嫌いになったわけではありません。
これは私の選択なので、真似してくださいとは言いません。ただ、知らないまま10年経つのと、知ったうえで残るのとでは、まったく違うと思っています。
同じリハ職でも言語聴覚士は事情が違います。
人手不足なのに募集が出ない理由はコチラの記事にまとめています。


これから何をしておくか
数はもう減りません。
国が入学定員を絞る方向を示していますが、すでに資格を持っている人は減らないからです。
なので、やることは「増えるのを止める」ではなく「どこに身を置くか」です。
- いまの職場の条件が、5年後も通用するかを確かめる
- 他の職場が何を出しているかを、実際に見ておく
2つ目が意外と大事です。比べる先を持っていないと、いまの条件が良いのか悪いのか判断できません。
求人を見るだけなら、いま動かなくてもできます。
給料・残業・受け持ち数といった条件は、リハビリ職専門の転職サービスに聞けば、求人票に出ていないところまで教えてもらえます。
先に正直なところを書いておきます。
登録すると、担当の方から電話がかかってきます。連絡が来るのが煩わしい方には向きません。
それでも、いまの職場しか知らない状態で「ここしかない」と思い込んでいる方には、見ておく価値があります。いますぐ動く必要はありません。
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※ 掲載内容は2026年9月時点の情報です。
この記事で紹介したサービスを実際に使った人の評判はコチラの記事にまとめています。


理学療法士の飽和と人手不足によくある質問
理学療法士は人手不足でしょうか飽和でしょうか
どちらも本当です。国の推計では供給がすでに需要を上回っていますが、個々の職場が人手不足であることとは矛盾しません。足りないのは有資格者ではなく、条件の合う人だからです。
飽和するのは何年からですか?
厚生労働省の資料には、作成時点ですでに供給が需要を上回っていると書かれています。いちばん需要が多い想定で見ても、2026年ごろに追い越される見通しです。
なぜ理学療法士はこんなに増えたのですか?
1999年の規制緩和で養成校を作りやすくなったためです。入学定員は1999年の3,625人から2015年の13,435人へ、16年で3.7倍になりました。
これから理学療法士を目指すのはやめたほうがいいですか?
私個人の意見としては、よっぽど好きでなければすすめません。ただ、これは私の見方であって、国が資格を減らすと言っているわけではありません。数字を見たうえで、ご自身で判断してください。
いま働いている人は、何をしておけばいいですか?
いますぐ辞める必要はありません。ただ、他の職場が何を出しているかを見ておくと、いまの条件が良いのか悪いのか判断できます。比べる先を持っておくことが、いちばん現実的な備えです。
まとめ|数はもう戻らないので置く場所を選ぶ話です
「人手不足なのか飽和なのか」という問いには、国の資料がはっきり答えていました。
- 国の推計では供給がすでに需要を上回っている
- 2040年ごろには供給が需要の約1.5倍になる見通し
- いちばん需要が多い想定でも2026年ごろに追い越される
- 増えた理由は1999年の規制緩和
- 入学定員は16年で3.7倍に増えた
- 2040年の人口10万人あたりは278人で、資料の5か国で最多のドイツを上回る
- 現場が足りないのは有資格者ではなく「条件の合う人」
- だから人手不足と飽和は同時に成り立つ
数はもう戻りません。
すでに資格を持っている人は減らないからです。
だからこれは、危機感を煽る話ではなく、置く場所を選ぶ話だと思っています。
同じ資格でも、どこで働くかで待遇はまるで違います。



私はこの数字を見て、自分の答えを出しました。あなたの答えは違っていいと思います。ただ、知らないまま決まってしまうのは違うので、この記事を書きました。
もし今日ひとつだけやるとしたら、いまの職場の条件を、他と1つでも比べてみることです。
それだけで、自分がどこにいるのかが分かります。
\ 10年後も同じ場所にいるか決める前に /
※ PTOT人材バンクの公式サイトに移動します。登録すると担当の方から電話が来ます。









